蒼き夜の峰にて
もう30年以上も前の話。飛騨高山から松本に向かう県境の安房峠を越える頃には夜になっていました。…穂高が見えます。月明かりで残雪の穂高連峰が。1986年5月22日。当時はまだオフシーズンなら上高地にマイカー乗り入れが可能でした。大正池のほとりで三脚を立てます。見えるものは写る。そう教わりました。ただ少し前に夕景の撮影で失敗していました。蒼く暮れ行く空が妙に明るく写って…。オートの露出のせい。それで露出を抑えてしまって…。
パソコンで補正してみたのですが、どうも画質は荒れてしまうようです。写真初心者でした。デジカメなどなかった時代、その場で確認はできません。その後再チャレンジもしたのです。でも同じような条件にはなってくれません。風景との出会いも一期一会。撮り直しはきかない。得たのはそんな教訓です。
1989年5月18日、竜門避難小屋到着。夕食を済ませて準備を整えます。外に出るとすっかり夜。月が昇っています。残雪に覆われた竜門山で撮影を始めます。東北、朝日連峰は豪雪地。しっかり防寒はしています。風がないので助かります。まずは最高峰の大朝日岳(標高1870m)を狙います。6×9の中盤カメラ。手前の雪面を入れて奥行きを出します。あおりをかけ絞り込みたいのですが、それだけ露光時間が長くなります。45分と1時間半。段階露光で1カット2枚。
月明かりの朝日岳
月明かりの谷
朝まで撮影を続けます。1カット約2時間で、結局撮ったのは4カット8枚。35㎜カメラに高感度フィルムでも撮ってみたのですが、画質が荒くて使い物になりません。満月まではあと3日。でも雨。それも3日間。4日目は天候が回復。でも食料は尽きて下山となりました。
月明かりの二子山
秩父の二子山(標高1166m)。雪はなかったのですが、夜になってもよく見えていたので撮ってみました。露光中に上空を横切った雲が白い筋になりました。
月夜 湯ノ丸高原にて
残雪の夜の山はとても印象的。
でも撮影は結構面倒です。
少しずつでも撮り続けようと思っていたのですが、
結局撮れず仕舞いになっています。